
溶接技術は、製造業において不可欠な工程の一つです。しかし、適切な技術と管理が行われない場合、溶接にはさまざまな欠陥が発生する可能性があります。これらの欠陥は製品の品質や耐久性に大きな影響を及ぼすため、理解し、適切な対策を講じることが重要です。
本記事では、溶接欠陥の種類とその対策について詳しく解説します。また、当社矢内精工㈱の取り組みを通じて、いかにして高品質な溶接を実現しているかをご紹介します。溶接技術の向上を目指す皆様にとって有益な情報を提供し、品質向上の一助となれば幸いです。
溶接欠陥の種類
溶接欠陥は、大きく分けて「内部欠陥」と「表面欠陥」の2種類に分類されます。
ここからは、当社で採用しているアーク溶接の欠陥について詳しく見ていきましょう。
アーク溶接に起こる欠陥

ブローホール(Blowhole)
ブローホールは、溶接金属内に比較的大きな空洞が生じたものを指します。これは通常、単一の大きな穴として現れ、肉眼でも確認できることが多いです。
発生原因 | 影響 |
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溶接中にガスが溶接プール内に入り込み、そのまま固化する | 溶接部の強度に影響を与え、耐久性を低下 |
シールドガスの不足 | 目視検査で確認できるため、外観検査で簡単に検出可能 |
適切でないシールドガスの流れ | 溶接部の美観を損ない、場合によっては再溶接が必要となる |
溶接材料の不純物や湿気 | 内部欠陥の広がり |
過剰な溶接電流 | 気密性や液密性の低下 |
スラグ巻き込み(Slag Inclusion)
溶接の際に発生するスラグは、不純物である酸化物が金属の表面に浮き出てきたものです。しかし、スラグが適切に排出されない場合、金属内に閉じ込められた状態となり、これをスラグ巻き込みと呼びます。
発生原因 | 影響 |
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スラグが大量に含まれる | 溶接金属内にスラグが残留し、溶接の品質が低下 |
スラグの排出が一定の方向にうまく行かない | 接合部の強度が低下し、耐久性が損なわれる |
狭開先溶接部、横向溶接の上側開先、レ型開先の立板側開先で発生 | 溶接後の美観が悪くなる |
ビードの凸状形状によるスラグの滞留 | 疲労寿命の低下 |
狭開先溶接での開先壁方向への溶け込みが浅い | 非破壊検査で欠陥の検出が難しくなる |
融合不良
融合不良とは、溶接技術の分野で使用される用語で、溶接部の欠陥の一つです。この欠陥は、溶接ビードと開先面の間、ビード間などで溶接境界面同士が十分に溶け合っていない状態を指します。融合不良は表面から確認できない内部欠陥であり、溶接部の性能に重大な影響を与える可能性があります。
発生原因 | 影響 |
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入熱量の不足 | 静的強さの低下 |
溶融金属の先行 | 構造物の延性の低下 |
ワイヤの狙い位置やウィービングの不適正 | ぜい性破壊(脆く割れる現象)のリスク増加 |
開先形状や積層方法の不適正 | 腐食のリスク増加 |
アークの不安定 | 応力腐食割れのリスク増加 |
前パス(最初の溶接ビード)形状の不良 | 微細組織の不均一な変化 |
割れ(高温・低温)

高温割れ
高温割れは、溶接金属が凝固中に発生する割れです。ビードに平行に走る「縦割れ」、ビードに直角に出る「横割れ」、終端に発生する「クレーター割れ」など、割れの角度で名称が異なります。
発生原因 | 影響 |
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溶接金属中の硫黄やリンの成分の不均一 | 溶接部の強度低下 |
凝固温度幅の拡大 | 溶接部の耐久性低下 |
収縮応力の発生 | クリープ破壊の促進 |
低温割れ
低温割れは、溶接部が冷却後に発生する割れで、発生箇所により「ルート割れ」「ビード下割れ」「トウ割れ」と名称が分けられます。
発生原因 | 影響 |
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溶接部の拘束応力や歪みの集中 | 構造物の強度低下 |
溶接中に侵入した水素の拡散 | 耐久性の低下 |
HAZ(熱影響部)の硬化組織の水素脆化 | 延性の低下 |
凝固割れ
凝固割れは、溶接金属部でミクロ偏析が生じ、低融点の膜が形成され、その部分の凝固が終了していない状態で収縮時の応力が作用することで生じる亀裂です。
発生原因 | 影響 |
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溶接材料の選択不適正 | 溶接部の強度低下 |
継手形状による大きな応力 | 構造物の信頼性低下 |
SR割れ
SR割れは、溶接後の熱処理時にHAZの粗粒域に発生する粒界割れです。クロムやモリブデン、バナジウム等の合金元素を含むHAZが450度以上に加熱されると大きく脆化し、再加熱処理の際に発生する応力によって粗粒域に粗粒割れが発生します。
発生原因 | 影響 |
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溶接中の水素侵入 | 溶接部の脆性増加 |
再加熱処理による応力 | 構造物の信頼性低下 |
ポロシティ
ポロシティは、溶接技術の分野で使われる用語で、アーク溶接における溶接欠陥の一種です。具体的には、溶接金属中に発生するブローホール(球状の空洞)や、表面にできる小さなくぼみ穴(ピット)などの総称です。これらの欠陥は溶接部の品質や強度に影響を与えるため、適切な対策が必要です。
発生原因 | 影響 |
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液体金属内でのガスの滞留 | 構造強度の低下 |
キャビティ(空洞)に金属が充填される際の空気の内包 | 疲労強度の低下 |
高圧の小球体状の飛散 | 美観の損傷 |
不適切なシールドガスの流れ | シール性の低下 |
溶接材料の不純物や湿気 | 腐食の促進 |
アンダーカット
アンダーカットは、溶接ビード側面が溶接母材の表面よりも深く掘られてしまう状態を指します。この欠陥は、溶接ビードの幅が開先幅に達していない場合や、アーク溶接で過剰な電流を流した場合に発生します。アンダーカットは溶接部の強度を低下させる原因となるため、注意が必要です。
発生原因 | 影響 |
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過剰な溶接電流 | 溶接部の強度低下 |
高すぎる溶接速度 | 疲労強度の減少 |
ウィービングの幅が大きすぎる | 腐食のリスク増加 |
不適切なトーチ角度 | 美観の低下 |
溶接欠陥の検出方法

溶接欠陥を早期に検出し、修正することは、製品の品質を保証するために不可欠です。主な検出方法には以下のものがあります。
- 目視検査:溶接部を直接目で確認する方法です。基本的な欠陥の検出には有効ですが、内部欠陥の検出は困難です。
- 超音波検査:超音波を使用して内部欠陥を検出する方法で、非常に高精度な検出が可能です。
- X線検査:X線を使用して内部欠陥を検出する方法で、金属内部の欠陥を詳細に把握できます。
- 磁粉探傷検査:磁性体に磁粉を適用し、欠陥部に集まる現象を利用して検出する方法です。
矢内精工㈱の取り組み
矢内精工㈱では、高品質な溶接製品を提供するために、徹底した品質管理と技術の向上に努めています。当社の製品は以下の特徴を持っています。
1、高い技術力
- 冷間鍛造技術を活用し、高精度な製品を提供しています。
- 独自の技術開発により、溶接部の欠陥を最小限に抑えることが可能です。
2、環境への配慮
- エコステージ認証を取得し、環境にやさしい製造プロセスを採用しています。
- 資源の有効利用と廃棄物の削減に努めています。
3、徹底した品質管理
- ISO9001認証を取得し、品質管理システムを確立しています。
- 製品安全管理の強化により、顧客満足度の向上を図っています。
矢内精工㈱の製品

矢内精工㈱の主な製品
- コンプレッサー部品:高精度で耐久性の高い部品を提供し、自動車産業で広く利用されています。
- クラッチ部品:高い耐摩耗性と信頼性を持つ部品を製造し、幅広い産業で使用されています。
- レジャー用クラッチ部品:高品質な製品を提供し、顧客の多様なニーズに応えています。
- アルミニウム合金の冷間鍛造成形:環境に配慮した成形方法を確立し、高品質な製品を提供しています。
溶接欠陥の種類と対策で品質向上を実現する矢内精工㈱の取り組み
矢内精工㈱の取り組み
溶接欠陥の種類と対策を理解することで、製品の品質向上に寄与します。矢内精工㈱では、高品質な製品を提供するために、以下の取り組みを行っています。
- 最新のアーク溶接技術を活用し、キュービクル、配電盤、電源制御盤を製造
- 高い生産効率と品質管理を実現
- 多くのお客様から信頼を得る
溶接欠陥の種類とその対策は、製品の品質に直結します。矢内精工㈱は常に技術向上と品質管理の強化に努めており、建設業や電力・エネルギー業などで広く利用されています。
今後もお客様の期待に応えるため、絶え間ない努力を続け、矢内精工㈱と共に製造業界の未来を切り開きましょう。