ステンレスは耐食性や強度、光沢の美しさなどから、さまざまな産業分野で広く利用されています。建築や医療、食品加工、さらには航空宇宙産業に至るまで、その用途は多岐にわたります。しかし、ステンレスは一般的な鋼材に比べて加工が難しい素材でもあります。適切な加工方法を選ぶことで、品質や生産効率を向上させることが可能です。本記事では、ステンレスの主要な加工方法について詳しく解説します。
ステンレスの特徴と加工の難しさ

ステンレスは鉄にクロムを含ませた合金であり、耐食性が高いのが最大の特徴です。さらに、ニッケルやモリブデンなどを添加することで強度や耐熱性を向上させることができます。しかし、その一方で以下のような加工上の難しさもあります。
- 硬度が高い:一般的な鉄鋼よりも硬いため、切削加工時に工具の摩耗が激しい。
- 加工硬化性が強い:加工を進めると素材が硬くなり、次の工程がより困難になる。
- 熱伝導率が低い:熱がこもりやすく、加工中に熱変形が起こりやすい。
- 粘り強さがある:切削や研削の際に切りくずが絡まりやすい。
こうした特性を理解した上で、適切な加工方法を選択することが重要です。
ステンレスの主要な加工方法

切削加工
切削加工は、旋盤やフライス盤、マシニングセンターなどを用いてステンレスを削る方法です。代表的な手法には以下のようなものがあります。
- 旋盤加工:円柱状の素材を回転させながら刃物で削る。シャフトやパイプの製造に適している。
- フライス加工:回転する工具を用いて平面や溝を削る。精密部品の加工に用いられる。
- ボール盤による穴あけ:ドリルを用いて穴をあける工程。摩擦熱による焼き付きが起こりやすいため、切削油を適切に使用することが重要。
切削加工では、耐摩耗性の高い超硬工具やコーティング工具を使用することで、工具の寿命を延ばしながら高品質な加工を実現できます。
研削加工
研削加工は、砥石を用いてステンレスの表面を削り取る加工方法です。仕上げ精度が高く、ミクロン単位の精密加工が可能です。
- 平面研削:ワークの表面を平坦に仕上げる。
- 円筒研削:円筒形状の部品を高精度に仕上げる。
- 内面研削:内径を研磨し、高精度な穴加工を行う。
研削加工は熱が発生しやすいため、冷却液を適切に使用して熱変形を防ぐことが重要です。
レーザー加工
レーザー加工は、強力なレーザービームを照射し、ステンレスを切断または彫刻する方法です。非接触加工であるため、工具摩耗がなく、高精度な切断が可能です。
- レーザー切断:精密な形状を切り出すのに適しており、薄板の加工に最適。
- レーザーマーキング:製品に識別用の刻印を入れる際に使用。
プレス加工
プレス加工は、金型とプレス機を使ってステンレスの板材を打ち抜いたり、曲げたりする加工方法です。
- 曲げ加工:V字やU字に曲げることで、筐体部品などを成形。
- 絞り加工:カップ形状やボウル形状の製品を成形する。
プレス加工は量産向きであり、金型の精度が品質を左右します。
溶接加工
ステンレスの接合には、溶接が広く用いられます。代表的な溶接方法には以下があります。
- TIG溶接:高品質な溶接が可能で、薄板の溶接に向いている。
- MIG溶接:ワイヤーを自動送給しながら溶接するため、作業効率が高い。
- スポット溶接:電極でステンレスを挟み、高電流を流して接合する。自動車部品などに使用される。
ステンレスの溶接では、熱影響部の変色を防ぐために適切なシールドガスや後処理を行うことが重要です。
加工方法の選択基準
ステンレスの加工方法を選ぶ際には、以下の要因を考慮する必要があります。
- 素材の種類:オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系など、種類によって加工のしやすさが異なる。
- 製品の形状と精度:高精度を求める場合は研削加工やレーザー加工が適している。
- 生産コスト:量産向けならプレス加工、試作なら切削加工が向いている。
- 用途と耐久性:耐食性を維持したい場合は、適切な表面処理や仕上げを施す。
まとめ
ステンレスの加工には、切削加工、研削加工、レーザー加工、プレス加工、溶接加工など多くの方法があり、それぞれに特長と適用範囲があります。ステンレスの特性を理解し、適切な加工方法を選択することで、品質を維持しながら生産効率を向上させることが可能です。用途に応じた最適な加工方法を選び、優れた製品を製造することが重要です。